研究概要 |
1)当該科学研究費補助金による昨年度の研究を継続し,関数方程式の鎖を満たすMahler型関数の特殊値についての研究をK.Vaananen氏(オウル大学,海外研究協力者)と共に行った。その結果,無限積で表される関数については,それらが乗法群を作るという著しい性質に着目することにより,特殊値の代数的独立性を究明する手掛かりが得られた。その方針は,昨年度の研究により得られている超越測度についての結果を出発点にして,D.Duverney氏が導入した帰納的方法の最初の形(Math.Proc.Cambridge Phil.Soc.130,2001)を応用する,というものである。 これについては,今後,詳しい検討を行う予定である 2)Y.Bugeaud氏(ストラスブール大学)との共同研究により,整数係数多項式の解の分離性について,以前に得られていた結果を改良した。そのために,判別式を使う従来の方法を対称化する,新しい方法を開発した。さらに,同様の方法を使って,与えられた数と多項式の解との距離について,有用な評価を得た。その応用により,ほとんどすべての数が満たす超越測度について,大変良い上界が得た(Bugeaud氏との共著論文"Integer polynomials with multiple roots"がMathematikaに掲載される予定)。 研究代表者は,当該科学研究費補助金により,K.Vaananen氏,Y.Bugeaud氏,およびG.Walsh氏(オタワ大学)を招聴した(それぞれ,2007年10月14-24日;2008年3月4-9日;2008年3月3-9日)。これにより,当該研究課題に関する有益な知見が得られた。特に,Vaananen氏およびBugeaud氏とは,今後の研究に向けて大変貴重な研究討論を行うことができた。
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