研究概要 |
今年度は,種数g(>2)のGromov-Witten不変量を決定するBCOV(Bershadsky-Cecotti-Ooguri-Vafa)正則anomaly方程式の数学的構造の解明を目標とした.正則anomaly方程式は,数学的な構造について不明なところが多い一方で,高次の種数のGromov-Witten不変量を具体的に計算する一般的な方程式である.方程式の数学的基礎付けを得るために,楕円曲線の準モジュラー形式との対応関係を詳しく考察することを糸口に研究を行なった.その結果,変形空間の特殊ケーラー幾何学に由来する微分環から準モジュラー形式に対応する微分環(BCOV ring)がきわめて一般的に定義されることを見出し,正則アノマリー方程式はこのBCOV ringの上で書かれた微分方程式であるという構造が明らかになった. また,研究成果を香港中文大学で行なわれた研究集会"Workshop in Algebraic Geometry and Mathematical Physics"「2008,5月)および,バンフ国際研究所(カナダ)で行われた研究集会"Number theory and Physicsat the Crossroads"(2008,9月)において発表し,参加者と有益な討論をすることが出来た.
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