3年計画の本研究の1年目は主にファイバー付けされたコンパクト超ケーラー多様体のモーデル・ウェイユ群の有限生成性とその階数を求める明示的公式(Shioda-Tate型公式)の正則版を確立した。より一般に、アーベル多様体でファイバーつけされた多様体のモーデル・ウェイユ群が有限生成になるための幾何学的十分条件とそのときのモーデル・ヴェイユ群の階数を多様体の双正則幾何学的量を用いる公式を確立し、その特別な場合としてコンパクト解ケーラー多様体の場合の公式を導いた。この結果は論文"Shioda-Tate formula for an abelian fibered variety and applications"にまとめ投稿中である。また、超ケーラー多様体の任意階数の非可換自由部分群のモーデル・ウェイユ群を用いた構成法を明らかにした。この方法はKeum氏及びCampana氏により問題にされていた。その問題に肯定的解決を与えたことにもなる。その結果は論文"Mordell-Weil groups of a hyperk"ahler manifold - a question of F. Campana"にまとめやはり投稿中である。少し、観点は異なるが、関連する研究として、-Keum氏D.-Q.Zhang氏とともに多様体の自己同型とエントロピーに関する問題提起型論文"Conjecture of Tits type for complex varieties and Theorem of Lie-Kolchin type for a cone"をまとめた。また、Nam-Hoon Lee氏と共同でBeauvilleのCalabi-Yau多様体と呼ばれる剛なCalabi-Yau多様体とその双有理モデルの変形連結性、同相性を調べ、非自明な小変形を有しないのに大域的な変形ではつなげることができる剛かつ非同相な多様体があるというかなり驚くべき例の存在を発見した。この例については共著論文"Connecting certain rigid birational non-homeomorphic Calabi--Yau threefolds via Hilbert scheme"にまとめ今年度いくつかの国際研究集会で講演予定である。 また、コンパクト超ケーラー多様体とその双有理変換群について筆者の研究も含めわかってきたことを依頼論文である雑誌数学の論説に「Salem多項式と超ケーラー多様体の双有理変換群」というタイトルの下でまとめた。この論説はすでに出版された。
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