研究概要 |
シフト基数系(SRS)は、有限性を持つ数系のモジュライ空間で、対応する数論的アルゴリズムのマルコフ分割の具体的構成が容易なクラスである。我々の研究グループの提唱したこのSRSという名称は標準的に使われるようになってきた。これらについていくつかの研究が進んだ。特にSRS内に対応する数系がどの程度存在するかを測度論的に論じたのがOsaka J. Math.でのBrunotte, Petho, Thuswaldnerとの共著論文である。SRSのもう一つの重要な問題である境界上点に対応する場合の離散力学系の軌道の周期性に関しては、二次の離散回転の場合には常に周期的であることをTsukuba J. Math.でBrunotte, Petho, Steinerと共に示した。その鍵は有理回転の自己誘導構造の持つPisot単数の拡大係数の出現である。その本質的な理由はまだ見えていない。Pisot数系のベータ展開の自然拡大は、単数でなくても非アルキメデス的埋め込みを用いて作ることができその応用として純周期点の分布を非常に詳しく調べることができる。これをおこなったのがMonatshefte Math.でのBerthe, Siegel, Baratとの共著論文である。力学系のアイデアの著しい数論的応用ができた例でもある。 有理数をベースとする展開はSRS数系の一部なのであるが、対応する言語は文脈自由言語でもなく大変難しい。Sakarovitch, Frougnyと共にlsrael J. Math.の論文でこれを用いて有理数の冪の小数部分の分布に関して面白い応用が見つけた。 Pisot数およびSalem数の分布に関しては未知のことが多い。もう一つのMonatshefte Math.の論文ではKwonとともに、Pisot数、Salem数が簡単に構成できるクラスを論じた。
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