研究実施計画に記載の通り、本年度は、Rasmussen氏(〜8月及び12月)、Cadoret氏(8月〜9月)、Saidi氏(7月〜9月)の来訪を受け、代数曲線の被覆と基本群に関する数論幾何について、研究の目的を十分果たすことができた。(特に、Rasmussen氏の二回目の来訪は、本補助金の使用により実現した。また、本補助金の使用により、Cadoret氏の九州大学出張が実現し、研究討論及び成果発表をしてもらえた。)より具体的には、次のような重要な研究成果を得ることができた。 1. Rasmussen氏とのガロア表現に関する共同研究について、代数体K上のg次元アーベル多様体Aの同型類と素数1の組で、Aの全ての1冪等分点をKに添加して得られる体が1の外で不分岐で1次円分体上副1な拡大になるようなものは有限個しかないことを予想し、一般リーマン予想の仮定下でKが有理数体の場合に証明できていたが、本年度は、一般リーマン予想の仮定下で、Kが任意の代数体の場合に証明できた。 2. Cadoret氏とのフルビッツ空間に関する共同研究について、本年度は、有理数体上有限生成な体上の曲線の数論的基本群の(ある種の弱い条件を満たす)1進ガロア表現が与えられた時、その表現を曲線の(剰余次数を制限した)閉点の分解群に制限して得られるガロア表現の像に対する下界の存在を証明できた。 3. Saidi氏との正標数に関する共同研究について、昨年度、有限体上の曲線やその関数体の遠アーベル幾何に関して、素数の無限集合Σである条件を満たすものに対し、幾何的基本群を最大副Σ商に置き換えた場合のIsom版を証明できていたが、今年度は、関連して、p進体上の曲線の遠アーベル幾何におけるセクション予想に関する結果を得た。 なお、本補助金を使用して、6月に東京大学、9月に東京工業大学、10月に中央大学に出張し、本研究課題に関係する意義ある研究交流、情報収集ができた。
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