研究概要 |
トーラス上の2色グラフから,関係式つき箙を構成する方法が物理学者たちにより提唱されている.ここで,2色グラフというのは,頂点が黒と白の2色に塗り分けられたグラフのことである.2色グラフに関しては,黒と白の頂点のマッチングである,パーフェクトマッチングという概念が重要である.パーフェクトマッチングが十分に存在するとき,それらの間のハイトチェンジという整数の組を考えることにより,格子多角形が定義できる.2色グラフがよい条件を満たすとき,上記関係式箙は,この格子多角形の定める3次元ゴレンシュタインアフィントーリック多様体の,非可換クレパント解消を与えると期待されている.今年度は,植田一石氏との共同研究において,2色グラフが「強結婚条件」と呼ばれる条件を満たすとき,関係式つき箙の,次元ベクトルが(1,...,1)であるような表現のモジュライ空間は,対応するアフィントーリック多様体のクレパント解消であることを示した.さらに,幾何学的不変式論を使ってモジュライ空間を作るときの安定性のパラメータを動かすことにより,任意の射影的クレパント解消がこのようなモジュライ空間として実現できることもわかった.この問題は,ミラー対称性を通じていわゆるコアメーバの研究とも関わり,また,ファノ多様体/スタック上の螺旋とも強く関わっている重要な問題であり,今後の発展を期待している.
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