研究概要 |
平成20年度は,主にダイマー模型に付随するモジュライ空間と箙の道代数について研究した.対応する格子多角形の一つの頂点を取り除き,他の格子点の凸閉包を取るという操作を考える.例えば三角形のときにこれを考えると,3次元アフィン空間上の群軌道のヒルベルトスキームから2次元アフィン空間上の群軌道のヒルベルトスキームを取り除くことに対応する.この様子は,2次元の場合のWunramとRiemenschneiderによるいわゆる特殊マッカイ対応を用いると良く理解でき,特に(群がSLに入らないときは)特殊でない表現に対応する類語反復的直線束の直和が上記補集合上の連接層の導来圏の傾斜対象になることがわかった.一般のダイマー模型については,両立性という概念を定義しそれを仮定すると,その三角形の埋め込みに対応するダイマー模型とマッカイ箙との対応を考えることにより,モジュライ空間の補集合上の傾斜対象を作ることができ,上記操作に対応するダイマー模型の操作を定義することができた.この操作により,類語反復的直線束の直和が傾斜対象である,という性質が両方向に遺伝することを示すことができた.これを用いると,両立的ダイマー模型に対してモジュライ空間と道代数の導来同値が成立すること,および,任意の格子多角形に対して対応する両立的ダイマー模型が存在することを示すことができた.これらはダイマー模型と箙の道代数に関する基本的な問題であり,植田一石氏との共同研究により解決することができた.ダイマー模型に関する両立性の概念は重要である.
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