研究概要 |
前年度では,曲線上の射影束の部分多様体から定まる相対的Reed-Muller符号に関する基礎的研究を行った。今年度では,この研究を更に発展させて以下に述べる様な成果を得た。 第一の結果は.部分多様体がファイバー構造をもつとき,ファイバーのReed-Muller符号と全空間の相対的Reed-Muller符号の最小距離を関係付ける不等式を証明したことである。これによってファイバーの有理点の個数と直線束の交点数を用いて最小距離の評価を与えることができる様になった。 第二に,射影束内の完全交叉多様体から定まる相対Reed-Muller符号のパラメーターを決定できた。具体的には,射影空間の完全交叉多様体の有理点の個数に関するGhorpade-Lachaudの定理と上記の不等式を併せて用いることにより,ベクトル束に対する適当な安定性の仮定の下で相対的Reed-Muller符号の最小距離に対して具体的な評価式を得た。また,直線束の大域切断のべクトル空間の次元をRiemann-Rochの定理を用いて計算し,符号の長さを決定した。 最後に,一般の二次超曲面の族や楕円曲面から定まる相対的Reed-Muller符号の長さと最小距離についても具体的な評価式を求めた。これらは,以前の研究に於いて非特異なファイバーをもつ多様体に対して得られた結果を特異点を許した場合にまで拡張したものである。 今年度の研究に於いて得られた成果は,通常のReed-Muller符号と相対的Reed-Muller符号の関係を明らかにしたという点で重要である。これにより,非特異なファイバーをもつ多様体に限らず,より多くの種類の代数多様体に対して相対的Reed-Muller符号のパラメーターを決定することが可能になると期待される。
|