本年度の当研究の目的は、相対的Reed-Muller符号の漸近的性質を解明することであったが、この課題に関して以下の様な成果を挙げることができた。 第一の結果として、有限体上定義された曲線上のベクトル束Eに対して、それに付随した射影束P(E)から得られる相対的Reed-Muller符号のパラメーターに関する多くの事実を解明した。我々は、安定でかつ大域切断で生成されるベクトル束が存在するための階数と次数についての条件を決定することによってP(E)上のnef直線束の存在を証明した。次に、射影空間内の完全交叉多様体の有理点の個数に関するGorphade-Lachaudの結果を用いて、P(E)内の完全交叉多様体から定まる相対的Reed-Muller符号の最小距離の下からの評価式を得ることに成功した。更に、楕円曲面と2次超曲面族の場合には最小距離のより精密な評価を得た。 第二の結果として、Garcia-Stichtenothによって導入されたArtin-Schreier曲線族上で相対的Reed-Muller符号の無限列の漸近的挙動を解明した。特に、適当な階数と次数をもつベクトル束Eを用いることにより、付随した射影束P(E)から漸近的に良い符号列を構成することができた。 本年度の研究により、相対的Reed-Muller符号が従来の代数幾何符号と同様に良い漸近的性質をもつことが明らかになった。今後の課題としては、更に相対的Reed-Muller符号の性能の向上を図ることが重要であると思われる。
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