研究概要 |
研究課題の2年目である平成19年度は,研究方向を複数に分けて研究した。 1 一般の剰余類群における剰余位数の分布を,計算機実験の方面から調べて,法則性をheuristicな立場から調べようとする研究(これは素数を法とする剰余類群の場合に,村田-知念が用いて成功した方法である)。これに関しては比較的小さな二つの素数p,qを選び,別に base と呼ばれる自然数a(これも小さく取る)を取って,かなり先までのa(mod pq)の類の剰余位数について,その分布を調べた(この部分について弦科研費で新たに購入した計算機を利用した)。この剰余位数が,たとえば4を法とした各類に「自然密度を持つ」くらい平均的に分布するかどうかが重大なポイントであるが,これまでに我々の得た計算結果によれば,どうやら「自然密度」は存在しそうである。これは,一般の剰余類群において剰余指数の分布は偏りが大きく,自然密度を持たないというPomerance達の結果と好対照をなす現象である。来年度は,この密度の存在をいかに証明するかが焦点になるだろう。 2 一般の剰余類群として,二つの素数の積pqを特に考える理由は,現在盛んに使われているRSA暗号の理論的研究に寄与するからである。今年度はより積極的に,code理論と整数論との関わりについて研究した。具体的には(1)主として知念宏司氏の研究で,codeからゼータ関数を構成し,その関数論的な性質を調べることによって,codeの研究を進めるというもの。ゼータ関数の理論ではリーマン予想という未解決の予想が重要であるが,codeから作ったゼータ関数のあるものはリーマン予想を満たすことが示された。(2)Code理論では2進数表示が重要であるが,これとは別に実用的な面からGray codeと呼ばれるものが従来から知られてきた。Gray codeと2進数との関わりを,Sum of degits関数という立場からかなり明確に関係つけた。
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