研究概要 |
平成19年度は、主としてl変数および多変数の保型形式のフーリエ係数や周期などの数論的不変量と保型L関数の特殊値とのあいだの関係を研究した。詳細は次の通りである。 1. ヘッケ型の合同部分群に関する楕円モジュラー形式fと、虚2次体Kの量指標Wに関するCM周期の絶対値の平方が、fとWに付随するある保型L関数の中心値によって表わされることを示した。過去の研究では、fのレベルN、Kの判別式、Wの導手が互いに素という条件が必須であったが、本研究では、Nがsquare freeという条件のみで成立している。この点は、2で述べる応用の際に重要である。 2. 3次ユニタリ群U(2,1)上の保型形式Fのフーリエ・ヤコビ係数と、Fに付随するL関数の中心値との関係について予想を提出した。また、Eisenstein級数、およびUnitary Kudla liftの場合には予想が成立することを示した。後者の証明には、lの結果を本質的に用いる。以上は、研究分担者菅野孝史氏との共同研究である。 3. 楕円モジュラー形式fと四元数環上の保型形式f'の組からテータリフトとして得られる2次の四元数ユニタリ群上の保型形式(Arakawa lift)について、そのフーリエ係数を計算し、それらがfおよびf'の周期の積と初等的定数によって表されることを示した。現在、f'の周期とf'に付随するL関数の中心値との関係を研究中である。以上は、成田宏秋氏との共同研究である。 4. アフィノイド・ヘッケ多様体でパラメトライズされるヒルベルト保型形式のp-進無限族を構成した。さらに,Fが偶数次の場合における応用として,固定された有限の傾きをもち,重さでパラメトライズされるヒルベルト固有形式のp-進解析的な無限族を構成した。以上は、研究分担者山上敦士氏の研究である。
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