平成18年度には、対数的スムース退化の一つの典型的な例として、コンパクト・ケーラー複素多様体の多重円板上のセミ・ステイブルな退化を当面の研究対象として取り組んだ。特に、特異ファイバー上に構成される混合ホッジ複体上に定まるウエイト・フィルトレーション達について考察を深め、これらのウェイト・フィルトレーション達の相互関係と、モノドロミーの対数をとって得られる射の性質とが結びついていることを明らかにした。 平成19年度中、ウェイト・フィルトレーションの様子についてさらに検討する過程において、モノドロミー作用の性質が重要な鍵となる可能性に思い至った。 すなわち、一般には準ベキ単であるモノドロミー作用が、ベキ単になるための適切な条件を見出し、それを用いて、モノドロミー作用がベキ単な場合に帰着することにより、相対対数的ドラームコホモロジー群上に混合ホッジ構造を構成することが可能になるものと期待される。 そこで、まず、モノドロミー作用がベキ単になるための適切な条件を見出すために、相対対数的ドラーム複体のコホモロジー層を計算する等の検討を加えた。
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