交付申請書に記載した研究実施計画の項目(1)のRicci-Pinl型定理の証明はまだ完成していない。項目(2)と(3)については、大きな進展があったので、その内容を以下に記す。 ・複素2次元複素空間形内の平行な平均曲率ベクトル場をもつ実2次元曲面に対し、その存在に関する基本定理を証明した。実際、与えられた正数bに対し平均曲率ベクトルの大きさが2bで正則断面曲率が-12b^2の複素空間形への平行な平均曲率ベクトルをもつはめ込みを構成し、更に実質的にこれで一般型曲面をつくすことを証明した。証明において、あたらしく使われたアイデアはもしケーラー角度関数が定数でない場合、そのような曲面の第二基本形式の全ての成分がケーラー角度関数で決定されることを非常に長い計算によって証明したことである。現在はこの結果を論文にまとめながら、その計算の最終チェックを行っている。この研究を拡張するために、ブラジル・マゾナス大学のTribuzy教授を訪ね、余次元が3以上の場合の共同研究を開始した。 ・周期的平均曲率を許容する回転面の研究については、一般次元でSO(n)型の場合に種々の成果を得た。具体的には(a)実数全体で定義された実解析的関数を与えたとき、それを平均曲率にもつようなSO(n)型回転超曲面の大域的存在を証明した。(b)一般次元の場合で、周期的回転超曲面の存在定理を得た。この証明には2次元の場合の当研究代表者による結果と新しく得られた高次元回転超曲面の集合から2次元回転面の集合への1対1対応を使って示された。これらの研究成果は2編の論文としてまとめられ、また、ブラジルのセアラ大学、サンパウロ大学の数学科での講演で詳しく紹介した。
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