研究課題/領域番号 |
18540062
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井関 裕靖 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (90244409)
|
研究分担者 |
小谷 元子 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (50230024)
藤原 耕二 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (60229078)
金井 雅彦 名古屋大学, 大学院多元数理科学研究科, 教授 (70183035)
納谷 信 名古屋大学, 大学院多元数理科学研究科, 教授 (70222180)
|
キーワード | 離散群 / 非正曲率空間 / 調和写像 / 剛性 / 固定点性質 |
研究概要 |
本研究の目的は、離散群の非正曲率空間に対する固定点性質を微分幾何学的な視点で導き、固定点性質の意味を探ることであった。この目的に沿って、平成18年度は以下のような成果を得た。 ランダム・ウォークが与えられた離散群Γが非正曲率空間Yへ等長的に作用しているとき、その作用に関して同変なΓからYへの写像fのエネルギーE(f)を定義することができる。さらに、Γに与えられたランダム・ウォークのnステップの推移確率は再びΓ上のランダム・ウォークを定めるので、このnステップの推移確率を用いて同変写像fのエネルギーEn(f)を定義することもできる。井関と納谷は、ある自然数nと正数εが存在し任意の同変写像fに対しEn(f)≦(n-ε)E(f)が成立するなら、ΓのYへの作用は固定点をもつことを証明した。(この結果が成立することはGromovにより主張されていたが、証明はSilberman、OllivierによるYがHilbert空間の場合のものしか知られていなかった。)さらに、Yが特異性の低い空間であるときには、上の条件はΓのYへの等長的作用が固定点をもつための必要条件にもなっていることを示すことができた。この結果を応用することにより、グラフ・モデルのランダム群が非常に広いクラスの非正曲率空間に対して固定点性質をもつことがわかる。 小谷は、離散群上のランダム・ウォークに関連し、結晶格子の磁場付き推移作用素のスペクトルと空間の幾何学的な構造の関係を研究した。 藤原は、非正曲率空間の重要な例であるランク2以上の対称空間の擬準同形による特徴づけを与えることに成功した。金井はWeyl chamber流の剛性と、松島やWeilによる古典的な消滅定理との間に予期せぬ関係があることを発見した。この消滅定理の離散版は、離散群の固定点性質を導くのに有効であった。
|