研究課題
本研究の目的は、離散群の非正曲率空間に対する固定点性質を微分幾何学的な視点で導き、固定点質の意味を探ることであった。この目的に沿って、平成20年度は以下のような成果を得た。ランダム・ウォークが与えられた離散群Γが非正曲率空間Yへ等長的に作用しているとき、その作用に関して同変なΓからYへの写像fのエネルギーE(f)を定義することができる。さらに、Γに与えられたランダム・ウォークのnステップの推移確率は再びΓ上のランダム・ウォークを定めるので、このnステップの推移確率を用いて同変写像fのエネルギーEn(f)を定義することもできる。昨年度までに、このnステップ・エネルギーを用いることにより、グラフ・モデルのランダム群に対する固定点定理を得ていた。このグラフ・モデルのランダム群に関する結果を精密化し、適当な有限グラフから得られるランダム群は、適当な仮定を満たす非正曲率距離空間に対する固定点性質をもつ無限双曲群になることを証明した。また、nステップ・エネルギーを用いた固定点の存在証明が、プレイン・ワード・モデルのランダム群についても有効であることを発見し、プレイン・ワード・モデルのランダム群の固定点性質に関する研究にも取り組んだ。こちらについては、まだ十分に納得のいく結果は得られていないが、証明に用いる議論を精密化することで、関係式集合の密度がある程度大きければ、プレイン・ワード・モデルのランダム群は、適当な仮定を満たす非正曲率距離空間に対する固定点性質をもつ無限双曲群になることが証明できると考えている。以上の研究成果から、非正曲率距離空間に対する固定点性質をもつ離散群が非常に多く存在することが明らかになってきた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Sugaku Exposition (掲載決定)
Annals of Global Analysis and Geometry (掲載決定)
Proceedings of the 1^<st> MSJ-SI, "Probabilis tic Approach to Geometry" (掲載決定)