研究概要 |
当該研究「ラドン・ペンローズ変換と無限次元表現論を用いた開複素等質多様体上の大域解の研究」の研究実績の概要は以下の通りである. 部分多様体の族の上で積分することによって,微分方程式の大域解を構成するという積分幾何の視点は,直線上の積分(現在では医学への応用からX線変換と呼ばれることもある)を用いて超双曲型方程式の解を構成したF.Johnにさかのぼる. 当該研究では,この考え方を,対称性の高い非コンパクトな複素多様体上のDolbeaultコホモロジーに適用することによって,複素解析的な高階の微分方程式系の正則大域解を全て構成することをテーマとしている. 今年度はEastwood-Penrose-Wellsによって構成された複素3次元と複素4次元の多様体を結びつけるRadon-Penrose変換の理論を高次元化し,さらに,半単純リー群の無限次元表現の理論を援用して高次元の複素対称空間上の微分方程式系の大域解を構成するための基礎研究を行った. とりわけ,管状有界領域に対して有効な従来の手法を非管状領域に拡張するためにはいくつかの困難があったが,一般の不定値ユニタリ群U(p,q)を変換群とする非管状有界領域に対してPenrose変換の像を決定することに成功した.この結果は2009年1月に行われた国際研究集会で成果発表した.現在,論文を準備中である. また,研究代表者が京都大学数理解析研究所において主催したRIMS共同研究集会のプロシーディングスを査読つき論文集として編集し,出版した.
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