研究概要 |
本年度は,ポアンカレ円板上と球面上の最短ネットワーク問題に関して、大きな研究成果を挙げることができた。与えられた有限個の点からなる集合Xに対して、最小シュタイナー木の総長と最小全域木の総長の比をXのシュタイナー比と呼ぶ。空間上で点集合Xを動かしたときの下限をその空間のシュタイナー比と呼ぶ。一般に、曲面のシュタイナー比は1/2以上である。得られた結果は以下のとおり。ポアンカレ円板の中の正n角形の頂点に対するシュタイナー比は、半径を無限大に発散させると、2n/(n-1)に収束する。したがって、ポアンカレ円板のシュタイナー比は、1/2である。球面のシュターナー比については、ウェンとルービンシュタインが、√<3/2>になることを出張していた。しかし、私の調べでは、その証明は2つの点で不完全であった。1つは、半径の異なる球面上の2つの三角形の間の縮小写像の存在に関する構成法である(圧縮定理)。もう1つは、球面上の多角形を3角形分割する際に用いる対角線の存在の証明である。この2つのことに対して、完全な証明を与えることに成功した。ただし、ウェンとルービンシュタインたちが最終目標としていたの定理の証明方針は変更していない。圧縮定理については、もっと一般的な曲率が下に有界なアレキサンドルフ空間に対して、球面上の3角形との間の比較定理に拡張できたので、可変曲率空間上のネットワーク問題に対しても新しい研究成果が期待できる。曲面上での測地線の幾何学の研究対象が大きく広がることが期待できる。
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