与えられた有限個の点からなる集合Xに対して、最小シュタイナー木の総長と最小全域木の総長の比をXのシュタイナー比と呼ぶ。空間上で点集合Xを動かしたときの下限をその空間のシュタイナー比と呼ぶ。一般に、曲面のシュタイナー比は1/2以上である。昨年度の研究で得られた圧縮定理(曲率が下に有界なアレキサンドルフ曲面に対して、球面上の3角形との間の比較定理に拡張できた)の応用として、本年度は、ウェンとルービンシュタインが証明した球面のシュタイナー比の方法を拡張して、もっと一般的な、曲率が下に有界なアレキサンドルフ曲面のシュタイナー比を研究した。研究は意外な方向に展開している。1968年にギルバートとポラックが平面のシュタイナー比は√<3/2>であることを予想し、1990年にドとファンがその予想が正しいとした証明を発表した。1998年に球面のシュタイナー比が同じ数であることをウェンとルービンシュタインが主張した。2006年にインナミとキムがポワンカレ円板のシュタイナー比は1/2であることを証明した。しかし、本年度の研究において、平面や球面のシュタイナー比を求める証明は、不完全であることを示す例を見出した。これにより、ギルバートとポラックの予想が未解決問題に逆戻りになる。現在、出版のために投稿中で、審査員の判定を待っているところである。来年度以降この未解決問題の解決に努力したい。また、これを未解決のままとして、平面のシュタイナー比と比較するという立場で、曲率が下に有界なアレキサンドルフ曲面のシュタイナー比を研究したい。
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