ある種の非コンパクト四次元多様体上のゲージ理論を構成した。これまでの研究によって、四次元多様体特有にあらわれる非コンパクト空間のうち、極めて重要なものにキャッソンハンドルがある。これらは四次元多様体の微分構造を決めるもので無限樹木で表される。四次元多様体の微分構造の研究には非線形編微分方程式のモジュライ理論を用いたゲージ理論が極めて有効である。 その理論の柱は二つあり、一つは線形化方程式のフレドホルム性と、モジュライ空間の横断正則性である。一般に、多様体がコンパクトであれば、その両方ともうまく機能するような一般論が存在している。一方で、非コンパクト空間の場合その両者とも個々の状況で対応することが必要となる。これまでの研究によって、キャッソンハンドルの対応する樹木の増大度があまり大きくなく多項式程度のもので、さらにある種の等質性を持てば、その上のアティヤヒッチンシンガー複体と呼ばれる楕円型作用素がフレドホルムに成るようなリーマン計量と重み関数を作ることができていた。ここでの研究により、新たな関数空間を導入することで、ある種の漸近的な摂動方法を構成した。それを用いることで上で述べたキャッソンハンドル上に構成されたモジュライ空間を正則に成るように摂動することができた。 この応用として、K3曲面内に含まれるある種のキャッソンハンドルは、ある程度大きな増大度を持つことが示された。これは、K3曲面内にあらわれる微分構造がある程度複雑であることを示している点で、非常に具体的な定性的な結果を得たといえる。
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