研究概要 |
本年度の研究は、平成18年度科研費補助金応募書類研究計画調書「研究計画・方法」欄および平成19年度科研費補助金交付申請書「研究実施計画」欄に記載した計画に基づいて実施された。 まず昨年度中に望ましい結果を得た超楕円的Lefschetzファイバー空間に関する研究であるが、種数2におけるChakirisの構成を位相幾何の観点から一般化して得られるLefschetzファイバー空間の性質をより詳しく調べることができた。一般化されたChakirisファイバー空間の中には、互いに同相であるが微分同相ではないような4次元多様体のペアが4以上のすべての偶種数において存在する。本年度の研究では、この2つのファイバー空間はある有理曲面をファイバー和することにより互いに微分同相になることがわかった。超楕円的Lefschetzファイバー空間の微分構造が有理曲面とのファイバー和によって安定化することは、Auroux, Kharlamov-Kulikovによって証明されており、上のファイバー空間は1回のファイバー和によって微分構造が安定化する例を与えている。これらの結果は研究集会Groups of Diffeomorphismsの報告集の一論文として出版される予定である。 次にDehn quandleやコードのquandleを用いたLefschetzファイバー空間の分類と不変量の構成に関しては、いくつかの基本的文献を読み予備的な考察を行なったものの、発表するに値する結果を得るには至っていない。これに関しては平成20年度も引き続き考察を続ける予定である。 昨年度、D. Kotschick氏(ミュンヘン大学)との共同研究で得られた、写像類群における擬準同型による分離性予想への反例に関する結果は、本年度アメリカ数学会機関誌から出版された。
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