研究概要 |
本研究においては,3次元双曲型空間内の平均曲率一定曲面,ガウス曲率一定曲面およびそれらを一般化した線形ワインガルテン曲面を主に研究した.その中でも特に平均曲率関数から1を引いたものとガウス曲率関数が比例するようなワインガルテン曲面(通称HLW曲面)について研究した.扱った曲面はルジャンドル特異点を許容するものであり,大域的研究においてはとくに,曲面と言うよりはむしろ波面と呼ばれるのが適切なものである.得られた成果を具体的に述べる:(1)HLW波面の微分幾何的定義およびHLW波面の重要なサブクラスをなすBLW波面の微分幾何的定義.(2)HLW曲面は向き付け可能であることの証明.(3)平坦でないHLW波面は余向き付け可能であることの証明.(4)BLW波面に現れるルジャンドル特異点の型の判定条件.(5)BLW波面のジグザグ表現が自明であることの証明,などが挙げられる.以上の内容に関してプレプリントを執筆(大阪大学大学院理学研究科教授梅原雅顕氏と共著)し学術雑誌に投稿した.(現在,査読の結果を待っているところである.) 上に述べた成果は3次元双曲型空間内のHLW波面の大域的研究の基礎を与えた意義があると考える.また,研究手法の方向性も示唆していると言えよう.例えば,3次元双曲型空間内の曲面の双対と解釈される3次元ドゥジッター空間内の曲面についてもHLW曲面の類似物が考えられるが,それらの研究に対するストラテジーも与えていると解釈できる.
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