研究概要 |
昨年度の研究を継続し,複素Lie群のChow環の決定に取り組んだ.代数的トポロジーの手法により得られている完全旗多様体の整係数コホモロジー環のBorel表示では,生成元に幾何学的な意味合いがなく,Schubert類との対応関係も明らかではない.そこで,Bernstein-Gelfand-GelfandおよびDemazureにより導入された差分商作用素を用いることにより両者を対応付けられることがわかったので,これをSO(n), G_2,F_4の場合に実行し,Bott-Samelson, Toda-Watanabeにより得られている生成元とSchubert類との対応関係を明らかにすることができた.さらに,この結果を用いてR. Marlinにより1974年に得られている,対応する複素Lie群のChow環の結果を大幅に簡略化することができた.この結果をまとめた論文はFund. Math.に掲載予定である.残された3つの例外群E_6,E_7,E_8の場合には,対応する完全旗多様体の整係数コホモロジー環が,Toda-Watanbeおよび研究代表者により得られている.これに関しては.鍛冶静雄氏の協力のもとに,差分商作用素を計算するプログラムを作成し,これにより完全旗多様体のコホモロジー環の生成元をSchubert類で表すことに成功し,E_6,E_7,E_8のChow環を決定することができた.これらの成果は,研究集会「有限群のコホモロジーとその周辺」(8月,京都大学数理解析研究所),および,日本数学会秋季総合分科会(9月,東北大学)にて発表され,論文は公開中である(arXiv: math. AT/07093702).さらに,プログラムを改良し,多くの射影的等質多様体のコホモロジーの,Schubert類を用いた表示をDuan-Zhaoとは独立に完成することができた.これらの成果は,ホモトピー論シンポジウム(11月,金沢)にて発表された.
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