研究概要 |
研究3年目として、データにノイズが含まれる場合を許容する正則化法の構築に重点を置いた。任意多倍長計算環境を利用した場合、精度が鋭敏すぎることから、ノイズの混入したコーシーデータをもつラプラス方程式では、初期曲線のごく近傍でさえも数値解は全く得られないことを示し, 我々の計算法は、解の存在しない問題に対して、解が存在しないことを忠実に示す新たな計算法を提供していることを強調し, 査読付き論文として発表した(NCTAM誌, 第57巻)。 一方、実際問題においては、解の存在するモデルが想定されており、測定誤差の混入によって、数学的には解が存在しなくなっても、想定された問題の解を示唆する計算結果を示して欲しいわけである。計算環境については既に汎用的に使用可能となっている任意多倍長浮動小数点演算システムを使用した。指数型多点差分法を任意多倍長演算システムに融合し、入力データに対して連続的に依存しない偏微分方程式の解、すなわち計算法の立場からは感度が極めて高い解を数値的に頑健性のある方法で求める手法を目標とした。「感度が高い」という性質と「頑健性がある」という性質は互いに矛盾するといえるので、研究の要点は、それらの折り合いをどのように付けるかの指針を示すことである。指針を得る方向としてランク低減法を再検討した。ランク低減法は古い手法ともいえるが、特異値分解を新たに超高精度で行ってのランク低減法が有効であることを突き止め, 査読付き論文として発表した(計算数理工学論文集, 第8巻)。
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