研究概要 |
集合A上の多変数関数の集合で,射影関数をすべて含み,合成に関して閉じているものをA上のクローン(clone)という。A上のクローン全体の集合を(A上の)クローン束といい,L_Aと表す。射影関数の全体をJ_Aと表すとき,L_AからJ_Aを除いた集合における極小元を極小クローンという。極小クローンは,1個の関数によって生成されるクローンであり,その分類は単純そうに見えるが実は極めて複雑であり,まだほとんどの問題が未解決である。 18年度は,極小クローンの分類に関して,主に次の2項目について研究を行った。 1.有限体上の極小クローンの分類 極小クローンを生成する関数を極小関数とよぶ。極小関数が2変数idempotent関数である場合に焦点を絞り,その分類を目指した研究を行った。基礎の集合Aに有限体の構造を導入し,極小クローンの生成元となる関数を有限体上の関数として捉えるという新しい視点から研究を進めた。3値の場合(|A|=3の場合)の極小クローンの分類はすでにB.Csakanyによって与えられている。我々は,3値の場合の極小クローンの生成元を多項式の形で表現することから始めて,それらのうちのいくつかを任意の有限体上の極小関数に一般化する研究を行った。とくに,極小関数が一次関数である場合と単項式である場合については,完全な分類結果を得ることができた。 2.無限集合上の$S$-極小クローンの分類 無限集合A上のクローンで置換をすべて含むものの全体を考え,それらのうちで極小なクローンをS-極小クローンとよぶ。S-極小クローンの分類に関する研究を前年度から継続して行い,任意の濃度の無限集合に対し,S-極小クローンの特徴づけを与えることができた。なお,これらの研究はM.Pinsker氏との共同研究である。
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