研究概要 |
発展方程式の数値解の信頼性の向上を目的として,誤差移入による解の構造の変化に対する,統計的な挙動の考察を継続して行った。特に本研究では,まず一様乱数等によるランダムな様式での誤差を発生させてランダムネスを付加した場合の数値解の構造と,反復収束過程を有する流体シミュレーションにおける数値解と構造についての類似点について詳細に議論した。また,ランダムネスを負荷した場合の数値解の平均値としての力学的挙動がもとの差分方程式の構造とどのような差異があるかについて理論的に考察した。これにより,反復解法の収束条件による精度の低下(誤差移入の増大)により計算される系が安定化され,より次元の低い幻影解の発現を誘起する可能性があるとともに,解の分岐過程にランダムネスが大きく影響していることがわかった。 次に,マクロモデル(流体モデル)を応用した交通流モデルによる渋滞形成についての応用問題への展開を行った。特に,多重車線が存在する場合における車線変更を考慮に入れたモデルを構築し,数値シミュレーションを行い,渋滞形成時における走行車線と追い越し車線の同期現象や平均速度の逆転現象などの再現に成功した。 また,混ざらない非圧縮性の2流体問題に対する高い質量保存性を有するフラックス・フリー有限要素法について近似解の誤差評価および収束性を考察した。特に,収束性を示す際の不連続な粘性係数および密度を有する一般化Stokes方程式を考察し,これらの解の正則性の仮定の下でフラックス・フリー有限要素法の収束性を示した。
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