ロバスト制御系設計への数値数式融合算法の応用に関する研究を行った。研究内容は大きく分けて2分することができる。 1つはべき級数演算に関する研究である。この研究は、近似代数演算の考えに基づき、パラメータを含んだ数式をべき級数で表現し、応用するものである。べき級数は加減乗除が可能であり、一般的な数式と比較して取り扱いが柔軟に行えることから、H2またはH∞制御系設計等における応用が期待できる。2008年度はそのべき級数演算の効率と正確性に関する研究を行った“On the check of ..."は浮動小数点演算により計算されたべき級数の係数に含まれる数値誤差をチェックする方法を提案したものである。 また、“On computation of a power ..."ではべき級数根を計算するときの計算効率が、計算法の収束次数を変えることでどのように変わるかを議論した。これらの研究は、べき級数の効率的かつ正確な演算へ貢献すると考えられる。 もうひとつの研究内容は制御系設計上重要な量を、代数方程式の根として表現する研究である。例えば“The optimal H∞ norm ..."は、パラメータを含む制御対象に対して、達成可能な最適H∞ノルムを、多項式の根として表現する方法を提案している(従来の計算手法は数値演算に基づいているため、制御対象がパラメータを含む場合には適用できなかった)。また“On the Hankel singular values ..."では、同じくパラメータを含む制御対象に対してそのハンケル特異値を代数方程式の根として表現する方法が提案されている。“On strong positive ..."では、これらの手法を応用し、パラメータを含むシステムが与えられたとき、そのシステムが正定性をもつようなパラメータの範囲を計算する方法を提案している。これらの結果は、パラメータを含むシステムに対する非常に有効な制御系設計手法、もしくは解析手法の基礎となることが期待できる。
|