平成20年度は以下の研究を行った。 (1)ベーテ格子上のアンダーソンモデルの固有値・固有関数の分布 ベーテ格子の有限部分にハミルトニアンを制限した作用素の固有値・固有関数の分布を記述するランダム測度を考え、空間は動径方向のみ考えたときにはボアソン分布していることを示した。一方、エネルギー軸についてもボアソン分布していることがわかるが、これはAizenman-Warzelによりすでに示されていることの拡張である。全空間においてポアソン分布することの証明はできなかった。 (2)unfoldされた点過程の挙動 d次元上のアンダーソンモデルにおいて、その固有値を積算状態密度を用いてunfoldした点過程を考え、そのnatural scaling limitは収束する部分列を持ち、その集積点は無限分解可能な点過程であることを示した。証明は対応する有限系のハミルトニアンを考え、その直和で元のハミルトニアンを近似することによって行われる。技術的には実軸上の滑らかな関数のalmost analytic extension及びAizenman-Mochanovによるグリーン関数の期待値の分数モーメント評価を用いる。当初の目的はポアソン分布になることの証明であるが、その途中までできたことになる。
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