研究概要 |
複素正方行列で各成分が独立な標準複素ガウス分布に従うランダム行列を考えると,その固有値はランダムな解析関数(固有多項式)の零点であるが,これは回転に関して不変な分布をもつ複素平面内の零点過程を定める.このランダムな点過程について,ランダム行列のサイズを無限大とすると適当なスケール極限のもと固有値の経験分布が単位円内の一様分布に収束するが,スケールをかえずに点過程として考えると,サイズを無限大とする極限で平行移動と回転に関して不変な複素平面内の点過程に収束することが知られている.この点過程はこれまで研究してきた行列式点過程の一例であり,そのパラメーターとなる積分核は指数核である。この複素平面内の行列式点過程に対して,半径rの円内にある点の個数を数える確率変数N(r)は基本的で重要な量であるが,これは行列式点過程を定める指数核を半径rの円内に制限した積分作用素の固有値によってパラメーター付けられるベルヌイ確率変数の和になることが示される.この事実から確率変数の族{N(r),r>0}に対する大偏差確率のレート関数がポアソン点過程に対する同様の大偏差原理にあらわれるレート関数の積分の形であらわすことができることを導き,大偏差原理を証明した.このことにより独立な標準複素ガウス確率変数を係数とするランダム幕級数の零点について既に得られている結果と同じオーダーであることが示された.
|