Ginibreランダム点過程は複素平面における点過程の中で平行移動と回転に関して不変な過程の重要な一例であり、複素正方行列で各成分が独立な標準複素ガウス分布に従うランダム行列の固有多項式、つまりランダムな解析関数の零点過程の行列サイズ無限大の極限として得られるものである。この点過程は指数核の行列式を用いて相関関数があらわされる行列式点過程の典型的な例であり、また物理的には特別な温度における2次元の電荷のモデルとして知られ、その詳しい性質を調べることには意味がある。昨年度までの研究で、Ginibreランダム無限大での極限の様子を大偏差原理の立場から調べ、大偏差のオーダーが無相関のポアソン点過程であらわれるものとは違うことを示し、さらにその漸近係数をレート関数の形で完全に決定した。同様に同じ量の分散が半径の1/2乗分退化していることも示した。今年度はその角度に付随する振動項との積としてあらわされる統計量とその摂動に関する分散の漸近挙動を調べて、同様の退化があらわれることを示した。この結果とその一般化は、Ginibre点過程を可逆測度とするダイナミクスを無限次元の確率微分方程式の立場から定義する際、そのドリフト項を制御するために必要となる重要な評価である。
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