研究概要 |
1,昨年度までにセミマルチンゲールのフィルトレーションの種々の拡大のもとでのセミマルチンゲール分解を求め、それをもとにレヴィ過程のフィルトレーションの種々の拡大におけるcompensatorを、utilityの計算がしやすいような具体的な形で求めた.これを用いて、一般のレヴィ過程に対しそれぞれの拡大に関して可測なポートフォリオの適切なクラスを設定し、その要素を用いて、logarithmicおよびpower utilityを計算し、その最大値を求め、それが有限かどうかの判定条件をレヴィ過程の特性量で与えた.logarithmic utilityの場合にはレヴィ測度に対する緩いモーメント条件のもとでutilityが有限であるための必要十分条件を求めることができた.現実の金融市場では何らかのかたちでのインサイダーの存在は認めざるを得ないがどの程度までのインサイダー取引が許容可能かが問題となる.ひとつの考え方としてutilityが有限となることが許容可能な範囲だとすることができよう.そのように考えると上記の判定条件は重要である. 2.1の結果はブラウン運動の場合(インサイダーの情報量の多寡が判定条件となっている)と異なり、ジャンプの存在とその構造が結論(構造によっては情報量の多寡には無関係)に大きな影響を及ぼすことを示している.その一つの重要な例として、満期までに正(負)のジャンプがあり得るかを確実に予測できるかどうかを与えるジャンプの構造に関する代数的な条件を一般のレヴィ過程について得ることが出来た.
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