研究概要 |
本研究は,我が国の首都である東京近郊のインフルエンザの流行に関する数理モデルとシミュレーションによる研究である.我が国の首都圏では,映画"Shall we dance?"のように,非常に多くの人々が毎日朝と夕方郊外のベッドタウンと東京の間を往復している.多くの人々の'日周運動'は東京近郊の特徴であり,インフルエンザ流行シミュレーションおいて考慮する必要がある事項である.18年度の研究において,流行には通勤者を中心に少数の感染が続く初期フェーズと学校と家庭で大規模な感染が発生する拡大フェーズの2フェーズがあることが示された.また,学校閉鎖は流行のピークを低下させて流行拡大を遅らせる効果があること,交通遮断は地域へ流行が侵入した後では流行抑制の効果は小さいこと,学童へのワクチンの接種は学童だけでなく地域全体の感染者数減少の効果があることが判明した.19年度は,複数の対策を組み合わせて実施したときの相乗効果の検討を行った.相乗効果の大きさは組み合わせの種類によって大きく異なる.学校閉鎖と交通遮断を同時に実施すると,実施期間中のインフルエンザの流行は大きく掬制されるが,実施終了後に流行は再び拡大する.学童ワクチン接種と学校閉鎖は有効な対策であるが、同時に実施しても2つの対策の相乗効果はほとんどあらわれない.学童ワクチン接種と学校閉鎖は,学校で感染した学童が家庭にインフルンザを持ち込むという流行拡大メカニズムの同じ部分に作用するからである.また,学童へのワクチン接種の効果と交通遮断の効果にはほとんど関連がないことが分かった.インフルエンザの通勤者によるベッドタウンへの侵入の大小は,学童間の感染拡大にはほとんど影響しないのである.
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