当該研究年度には主に二つの研究を行った。まず第一に、中国・北京理工大及びチェコ・西ボヘミア大を訪問し、Ryjacek閉包で有名なRyjacek教授やXing教授と共同研究を行い、Claw-freeグラフに対する新しい閉包を発見し、ある条件を充たすclaw-freeグラフに対しては、2因子の存在がその新しい閉包によって定まる線グラフの2因子の存在と同値であることを示した。 claw-freeグラフの頂点xの隣接点全体N(x)が誘導する部分グラフ<N(x)>は高々2個の連結成分からなる。特に、成分数が一つの時、それをクリークに置き換える操作を可能な限り繰り返して得られるグラフをRyjacek閉包と呼ぶ。一方、claw-freeであることから、<N(x)>が二つの連結成分からなる場合、それぞれの連結成分はクリークである。そこで、xが長さが5以下の誘導サイクルに含まれるとき、<N(x)>をクリークに置き換えることを繰り返すことによって新しい閉包が得られる。明らかにこの閉包はRyjacek閉包の一般化になっており、さらにKelmansの定理よりこの閉包が唯一つ定まることが分かる。共同研究では、この閉包によっても2因子の存在は保存されることを示した。また容易にこの閉包が線グラフになっていることを示すことが出来る。2因子の存在の保存は、その線グラフの基グラフが支配的システムを持つことが保存されることを示すことによって証明される。 またRyjacek教授とは、昨年度アメリカ・メンフィス大のFaudree教授らとの共同研究で得られた予想についての議論を行った。Ryjacek教授はそれらの予想に対する重要な極値グラフを示し、予想の最小次数の下限が最良であることが示された。
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