1、感染症伝播を記述する2成分反応拡散系について、種々の非線形感染率モデルに対する昨年度までの研究成果に基づいて、拡散係数が一般の場合について数値計算を行うとともに、進行波解の存在とその速度の評価を解析的に研究を行ってきたがまだ未解決である。本年度は、研究集会「鳥インフルエンザを中心とする感染症の数理-モデリングと解析-」開催し、現実の感染症研究における様々な数理モデルの特徴とその役割を反応拡散モデルも含めて検討した。 2、ロトカーボルテラ型の捕食者と餌食モデルに対して、(1)餌食が存在しているところに捕食者が侵入した場合に発生する追跡侵入進行波解について、李聖林、村田宙俊の両名との共同研究を発展させた。先ず、李聖林の得た追跡侵入速度の数値計算結果を検討し、解析的考察とは矛盾することを研究代表者が指摘し、その原因を究明するため新たな数値計算を行い検討したが、まだ未解決であり現在も研究を続行している。また、これらの数値計算から、捕食者のダイナミックスにおいて種内競争がない場合には、餌食の拡散係数を固定し捕食者の拡散係数を0に近づけたとき解の最大値ノルムが大きくなり有界でなくなることを示唆する結果が得られた。このことは、ロトカーボルテラ型の捕食者と餌食モデルの興味ある性質の新たな発見であり、これらの性質を明らかにすることは、捕食者と餌食モデルを理解する上で非常に重要な問題である。(2)開放空間への捕食者と餌食の同時侵入進行波解については、餌食の拡散係数が小さいとき特異摂動法により、解の存在とその速度について議論できることを示した。2009年1月13日から16日に開催された京都大学数理解析研究所研究集会「生物数学の理論とその応用」(研究代表者細野雄三)において「侵入過程に現れる進行波解について」と題して、これらの成果の口頭発表を行った。
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