1、前年度に引き続いてロトカ-ボルテラ型の捕食者と餌食モデルに対して、 (1)餌食が存在しているところに捕食者が侵入した場合に発生する追跡侵入進行波解について考察した。捕食者に種内競争がない場合には、餌食の拡散係数を固定し捕食者の拡散係数を0に近づけたとき、解の最大値ノルムが大きくなり有界でなくなることを示唆する数値計算結果を得ている。今年度はその結果を理解するために、捕食者に種内競争がある場合について特異摂動法を用いて考察した。その結果、捕食者の種内係数を0とすることにより上記の数値計算結果が理解できることが分かった。この結果により、2種の基本モデルであるロトカ-ボルテラ型捕食者-餌食モデルの持つ特質の一つを明らかにすることが出来た。しかし、その解析には形式的な部分があり、数学的に厳密な議論は今後の研究課題である。以上の結果は、その他の数学的未解決問題も含めて京都大学数理解析研究所考究録1663(p.65-71)にまとめた。 (2)捕食者の拡散係数が0の場合には、最小速度は0となり任意の正の速度の進行波の存在が期待される。この場合は、進行波解の方程式は3次元力学系の不安定平衡点と安定平衡点を結ぶ軌道を求めることになり、シューティング法により数値的に求めることが可能であると考えられる。現在、そのプログラムを作成し、数値シミュレーションを行っているが、まだ有効な結果を得られていない。 2、本年度は、2010年2月20日研究集会「反応拡散系をめぐる最近の話題」開催し、現在の反応拡散系に関する研究状況を検討し、今後の研究の方向性について検討した。
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