研究概要 |
ネットワーク計画問題の代表例である最大流問題は,ネットワークを定義する有向グラフの縮小接続行列(接続行列から第1行と最終行を除いたもの)を用いて,線形計画問題として定式化される.さらに,ネットワークの容量が正の整数なら,フロー整数定理により,最大流問題は整数計画問題となる.我々はこの整数計画問題に付随するトーリックイデアルの性質を研究してきた.昨年度までの我々の研究で,このようなトーリックイデアルはユニモジュラーラティスのローレンスイデアルであり,ある単項式順序に関するグレブナー基底は必然的に普遍グレブナー基底となることが判っていた.さらに,計算機実験の結果,このようなトーリックイデアルの(普遍)グレブナー基底はネットワークを定義するグラフのサーキット全体に対応する2項式全体の集合と始点から終点に至る路に対応する2項式全体の集合の和集合に一致するという予想を得ていた.今年度,この予想に取り組み,大学院生渡辺扇之介,産総研池上大介の協力を得て完全な証明を与えることに成功した.その成果は2008年9月17日から19日東京大学柏キャンパスで行われた応用数理学会の年会で発表された.
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