研究概要 |
2006年8月に金沢において国際研究集会を開催して海外から多くの研究者を招聘し,当該分野について議論を深めた.特にVienna工業大学のJosef Teichmann氏を招聘しより深く2次金利モデルについて議論をすることができた.また11-12月には共同研究者の矢野孝次氏にカルフォルニィア大学サンデイゴ校に出張してもらい,研究成果を発表してもらうとともに,今後の研究の方向性についてFitzsimmonz氏やGetoor氏などの超一流の数学者と議論することができた.3月にはやはり共同研究者の松下智氏を欧州に派遣し,ルンド大学(スウェーデン)とパリ第7大学で講演してもらうことで多くの数学者の意見を聞くことができた.以上の研究活動の成果として以下のような知見がえられた. 「反対称マリアバン解析」…L^2ウイナー空間を反対称フォック空間とみることで無限次元リー環の表現を具体的に構成することができるようになり、またその中でウイナー2次汎関数が大きな役割を果たすことを発見した(新田泰文氏,松下氏との共同研究).「スーパー市場理論」…時間軸方向にヘッジ機会を増やすのではなく、「空間方向」に増やすことで静的ヘッジによるプライシングを目指す理論.フォック空間の構造に大きく依存した理論である(香西優生氏、松下氏との共同研究).「確率微分方程式のガロア理論」…確率微分方程式の強い解・弱い解の成す空間への群の表現を構成した(矢野氏との共同研究).2次金利モデルの拡張…レビ過程およびマルコフ過程への拡張が得られた(J.Teichmann氏,土屋貴裕氏との共同研究). 2007年3月以降,J.Teichman氏およびT.Tsuchiya氏と共同研究をすすめ,「熱核モデル」として徐々に完成の域に達しつつある。それ以外に金利の主成分分析についての高次理論の構築(石井郁美氏との共同研究)についていくつかの結果を得た。特にOU過程の2次形式で金利が記述されるときの主成分分析について基本的な結果を得た。これは前年度から継続しているソリトン理論と密接に関わる興味深い結果である。さらに,香西優生氏,森村祐一氏との共同研究で,企業価値の透明性を測定する新しいモデルを考案した。これも無限次元解析の初歩的な結果を利用するものである。本研究の主要部分である無限次元解析への代数的アプローチについては浦口紗千代氏との共同研究により,無限次元のベクトル場についての興味深い結果が得られた。
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