さまざまな不規則系列や不規則な構造体の1つである高次マルコフ木の上で観測される複合パターンに関する統計量やスキャン統計量の厳密分布および厳密分布間の関係について研究し、理論的な成果を得た。方法は、条件付き確率母関数や、条件付き2重確率母関数の方法をグラフィカルモデル上で使えるように拡張し、条件付き期待値のstepwise smoothingの性質を使った解析的なアプローチを用いた。具体的には、次のような結果が得られた。 1.独立な多値試行列上で複数の離散パターンを同時に考え、与えられた試行数までのパターンの観測数の確率分布と、複数のパターンに対してそれぞれそれが与えられた回数だけ起こるまでの待ち時間の確率分布の間の関係を、それぞれの2重確率母関数によって明らかにした。この結果は非常に一般的な結果であり、一般化された誕生日問題、クーポン収集問題などの複雑な問題に理論的な見通しを与えるだけでなく、計算にも有効である。 2.高次マルコフ木によって与えられるグラフィカルモデル上で、連やスキャン統計量の厳密分布を導出するための理論的な結果を与えた。これは、不規則系列上で研究されている条件付き確率母関数の方法を有向木のグラフィカルモデルへ拡張したものであるが、所謂線形から非線形への拡張であるので、易しい拡張ではない。この結果の1つの応用として、有向木の形をしたシステムの信頼度の計算があるが、そのためのアルゴリズムおよび具体的な計算例も提供することができた。
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