研究概要 |
(1) この研究では海外共同研究者の林氏と共に、複素平面のある方向の任意に小さい近傍で任意の有理形関数とその導関数が高々2つの値のみ共有するような特異方向の存在の結果を得た。さらに、いくつかの点の集合の逆像の一致による一意性定理が成り立つ集合(一意性集合)に関し、これまでの全複素平面での条件の代わりに角領域に制限したところでの条件から一意性定理を導く集合を得た。ちなみに、角領域でのネヴァンリンナ理論は、全平面でのときと違い色々な難しい点がある。一つは、接近関数m(r, f'/f)に相当するA(r, f'/f)等々がA(r, f'/f)=0(log r T(r, f))であり、A(r, f'/f)=0(log r S(r, f))ではない。ここでT(r, f)、S(r, f)はそれぞれ全平面、角領域での特性関数である。また、個数関数N(r, a)に相当する量のC(r, a)はa点が角領域で無限個あってもr→∞のとき発散することが言えない。そのため全平面の場合に比べ角領域の場合は条件が複雑になる。また高次元の場合、角領域での値分布理論は全くといって良いほど研究されていないので、今後の研究課題である。(2)高次元について連携研究者の相原は、複素射影空間上に動標的超平面を因子として与えた場合に藤本の一意性定理・有限性定理を拡張した。m次元複素ユークリッド空間上の有限葉解析的分岐被覆空間Xとその上で定義された有理型写像fの組(X, f)の族に対し有限性・一意性定理を与えた。また、ネヴァンリンナの欠除指数を射影的代数多様体上の線形系の関数として研究し、落合の欠除関係式におけるe_0の意味を与えた。
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