研究概要 |
(1)解の一組のCauchyデータを使った囲い込み法の弾性体における空洞,介在物あるいは亀裂などの不連続性の存在する場所や形状を抽出する問題は支配方程式が連立であることや特異点での解の挙動が複雑であることから長い間懸案であった。 前年度,対応する二次元の問題を考え,弾性体が均質で等方的,亀裂が線状でその端点のひとつが弾性体表面における既知の点であるという仮定のもとで,もう一つの未知の端点を,表面における‘うまく制御された'応力と対応する変位の一組から決定する公式を確立した。今回は弾性体が均質ではあるが非等方である場合へその結果を拡張した。 (2)さらに長年の懸案だった,針列の具体的な閉じた形での構成という探針法についての基本的問題に対して,支配方程式がLaplace方程式またはHelmholtz方程式で針が線分で与えられる場合に簡潔な解答を与えた。簡単に言うと,Yarmukhamedovが1972年に発表したLaplace方程式に対する特別な基本解の正則部分から針列が構成されるということである。さらにこの針列は針上の各点で爆発しているという知見を得た。 (3)Mittag-Leffler関数を使った囲い込み法と探針法の亀裂の逆問題への応用のアイデアを適用して,亀裂の可視部の情報をもたらす陽な方法を提唱するとともにその数値実験を実行しその有効性と限界を検証した。 (4)熱伝導体中の未知の介在物,あるいは中に発生した,腐食による空洞,亀裂の場所や形についての情報を物体表面における有限観測時間における温度および熱流束の有限個の組から抽出する逆問題もまた基本的で重要な逆問題である。 今回はこの問題を空間1次元の場合について考察し,囲い込み法を使ったそれらの情報の抽出公式を確立した。
|