研究概要 |
この研究の目的は,Banach環の保存問題を,合成作用素と関連づけて研究することである.とくに,スペクトル保存に注目し,次の問題を考えている. 問題:Banach環の間のどんなスペクトル保存写像が,合成作用素を用いて表現されるか? この問題に関し,羽鳥理氏(新潟大・理)と三浦毅氏(山形大院・理工)との共同研究で,平成18年度末,次の定理を発表した. 定理:巣位的半単純可換Banach環の間の単位的かつ乗法的なスペクトル保存写像は,合成作用素として表現される. 平成19年度は、この定理のさらなる一般化を探ってきた.われわれの証明は、もともと関数環の概念(峰関数など)を活用しているので,Banach環としての一般化には新しい考え方が必要であり,それを求めるために,研究分担者の高橋氏にBanach環に関する情報をいただいてきた.一方で,われわれの証明は,「関数」としての解釈が強く,「スペクトル保存」にしても「値域保存」と捉えられるので,定理の「単位的半単純可換Banach環」を具体的な関数環や関数空間にあてはめられる可能性を秘めている.そのような場合に,どのような局面が現れるのかが,今後の発展に重要であることがわかってきた. 上記の問題に関しては,羽鳥氏が,新潟大において研究グループを形成している.「バナッハ環セミナー」(筑波大)や「関数環研究集会」(信州大)などでは,彼らと議論が中心になった.とくに,「関数環研究集会」は,今年度は主催者側であったこともあり,関連分野の研究にも進展があった.平成18年度に問題点を指摘していたシフト作用素の問題や,スラントToeplitz作用素のスペクトルについて,院生との研究の中でいくつかの発見があった.その一部は口頭発表した.
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