研究概要 |
Pisotによって、現在Pisot数と呼ばれる代数的整数と幾何数列の小数部分の分布の問題との密接な関係が明らかになって以来、この方面の研究が著しく進んで来た.しかしながら、超越数のベキ乗の小数部分に関しては、未だほとんど解明されていないのが現状である.本研究では、Pisot数やSalem数のような特徴ある代数的整数の研究を通して、超越数の数論的性質を解析するのが目的であるが、特にeとして知られる自然対数の底のベキ乗に対する小数部分の下からの評価を改良することに成功した.これは、従来のMahler,Mignotte,Wielonskyらの結果を大きく改良するもので、その方法はよく知られたHermite-Pade積分の留数計算であるが、得られた近似多項式(2変数)の係数部の素因数に関する研究法を工夫し、評価を大きく改善することができた.しかし、予想される評価とは、まだ大きな差があり、引き続き研究を継続して行きたい.特に、評価のオーダーから言えば、Mahlerの得た最初のオーダーと同じものであり、Mahler自身も繰り返し述べているように、オーダーの改良は至難の業であろう.現状では、このPade近似が唯一強力な近似法であり、さらなる改良には新しい手法の開発が必要であろう.これに関しても、従来の研究をつづけて行きたい.研究成果は、現在、論文執筆中で、まもなく投稿予定である.
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