研究概要 |
本年度は主に,位相群上の正の定符号関数を異なる二つの視点から調べた. 第1のものは,G-N-S構成法として知られている局所コンパクト群についての結果の無限次元群への拡張である.筆者はHaar測度の代わりに,稠密な部分群の元による平行移動を許容する群上の準不変測度をとることにより,G-N-S構成法に匹敵する構成が無限次元群でも可能なことを示した.このような測度が存在する無限次元群の代表例として,滑らかな多様体上の微分同相写像の群がある.この結果は裏面の4番目の論文として発表予定である. 第2のものは,局所コンパクト群上の正の定符号関数の端点分解と対応するユニタリ表現の既約分解に関する考察である.正の定符号関数を何らかの方法で(例えば,Choqetの定理により)端点関数のdisintegrationとして表したとき,端点には既約なユニタリ表現が対応する.しかし,この分解は表現のいわゆる標準的な既約分解にはなっていない.反例は,Thomaが無限対称群上のII型factor表現に対応する正の定符号関数の特徴付けの仕事を与えたが(Die unzerlegbaren positiv-definiten Klassenfunktionen der abzahlbar unendlichen, symmetrischen Gruppen, Math. Z, 85(1964))),その定符号関数をObataが端点分解した仕事にみてとれる(Integral expression of some indecomposable characters of infinite symmetric group in term of irreducible representations, Math. Ann., 287(1989)). 現在までに,端点分解が既約分解となるための必要十分条件は得られているが,もう少し周辺の事情をしらべてから,論文として発表する予定である. また,無限対称群のregular表現の既約分解についても研究中ではあるが,今のところはっきりとした成果はでていない.
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