研究概要 |
当該研究年度においては,位相群上の正の定符号関数を二つの異なる視点から調べた. 第1のものは,G-N-S構成法として知られている局所コンパクト群についての結果の無限次元群への拡張である.筆者はHaar測度の代わりに,稠密な部分群の元による平行移動を許容する群上の準不変測度をとることにより,G-N-S構成法に匹敵する構成が無限次元群でも可能なことを示した.このような測度が存在する無限次元群の代表例として,滑らかな多様体上の微分同相写像の群がある.この結果は裏面の1番目の論文として発表済みである. 第2の視点は以下の主題に関わる:局所コンパクトな位相群上の正の定符号関数の端点分解はいかなる場合に対応するユニタリ表現の既約分解に相当するか. 現在,この問題に関する必要・十分条件は得られているが,その叙述がそれほど明快でないため,これに代わる他のより具体的な条件をさがしている. 上記の問題は無論いつでも肯定的ではない.その興味ある否定的な例として次に拳げるものがある.1964年にドイツの数学者Thomaは無限対称群のcharacter(II型のfactor表現のnormal trace)を研究してその完全な分類を得た.その後30年程して,Obataはそれらのcharacterのある種の端点分解を得た.問題はこの端点分解が既約分解に相当するか否かである. 筆者が今回得た結果をここに記せば,それは各characterを分類するThoma parameterに依存し,ある場合には否定的な結果となる. いつでも否定的か否かは,上記のより良い必要・十分条件の開拓と共に今後の課題である.
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