研究概要 |
シュタイン多様体Xにおいて,開集合Dがある正則関数族のファトゥ集合であることが,Dが有理型0(X)-凸であること,また,Dがシュタインかつ有理型近似性質をみたすことによって特徴付けられることを2005年の論文で証明したが,この有理型近似性質は,複素直線Cの開集合についていえば,弱い形のルンゲの有理近似定理である.一方,強い形のルンゲの有理近似定理に相当する性質を,一般のシュタイン空間Xの開集合について考え,それを強い有理型近似性質とよぶ.1次元のXに対しては,任意の開集合がこの性質をもつが,2次元以上のXに対しては,弱い有理型近似性質をもつ開集合全体のクラスが強い有理型近似性質をもつ開集合全体のクラスを真に含むことを示した.X=C^nの場合に限定しても,他の近似性質または擬凸性に関連する他の解析幾何的性質との関係を調べるとき,それらは全体としては複雑な様相を呈する.C^nの有理凸開集合Dは必ずしも強い円板的性質をもつわけではないが,Dがさらに単連結であれば,Dは強い円板的性質をもつことを示すことができたので,このことを用いて,Bremermann(1958)の問題も解決した.2005年の論文では,上記の特徴付けを得るために,ヴェイユ・岡の有理近似定理の一般化であるところのシュタイン空間における有理型近似定理を証明し,それを用いたが,一方,Hirschowitz(1971)によるシュタイン多様体における別の形の有理型近似定理が存在する.Coltoiu(1999)の定理により,2つの有理型近似定理はHom(H_2(X,Z),Z)=0なるシュタイン多様体Xに対しては同じ主張であるが,一般のシュタイン多様体Xに対してはそうではない.これらをシュタイン空間Xにおいて,ピカール群Pic(x)の部分半群に関する一般化された有理型近似定理として統合することにも成功した.
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