研究課題/領域番号 |
18540197
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
青木 貴史 近畿大学, 理工学部, 助教授 (80159285)
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研究分担者 |
本多 尚文 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00238817)
大野 泰生 近畿大学, 理工学部, 助教授 (70330230)
中村 弥生 近畿大学, 理工学部, 講師 (60388494)
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キーワード | 完全WKB解析 / 形式解 / インスタントン解 / 多重ゼータ値 / 超幾何微分方程式 / モノドロミー行列 / フックス型微分法的式 / 正則列 |
研究概要 |
本年度は大きなパラメータを持つ非線型常微分方程式系の完全WKB解析に関して、形式解(0パラメータ解)の構成についての研究とインスタントン解の構成について、いくつかの成果が得られた。また、微分方程式の整数論への応用についても成果があった。形式解の構成は形式解主要部が満たす代数方程式系の解の存在についての研究と、低次項の構成が逐次可能かどうかの研究の2つが柱となる。前者は古典的に正則列の理論の応用として捉えることができるが、実際に与えられた非線型微分方程式系を考察しようとすると従来の理論だけでは不十分である。そのため、正則列の概念を若干変形して緩正則列という概念を定式化した。正則列が与えられた関数列の順序に依存する概念であるのに対し、緩正則列は順序に依らないという利点を持つ。この概念を用いることにより、たとえば野海・山田系の偶数次数方程式に関しては主要部を決定する代数方程式系が有限個の解を持つことが証明できた。高次の項を構成するためにはヤコビアンが消えない集合を特定する必要がある。これに関しても若干の結果が得られたが、完全な解決には至っていない。来年度以降の課題である。インスタントン解の構成に関しては、少なくともパンルヴェ第1ヒエラルヒーの第2方程式に関しては多重スケール解析により2パラメータを持つものは得られることが分かった。一般的な議論は今後取り組むべき問題である。整数論への応用として得られたのは次のような結果である:等号付き多重ゼータ値の重さ・深さを固定したときのfull-height和の母関数をリーマンゼータ値と有理数を係数とする級数の指数関数として書き下すことに成功した。解析方法は、重さ・深さ・高さを固定した和を係数とする母関数を考え、それが超幾何微分方程式と関係するという事実を用いる。ある種の線形非斉次微分方程式の単位における特殊値の計算により関係式が得られるのである。この方法はいろいろな観点から興味深いが、これがうまく働く理由は今のところよく分かっていない。今後の解明が待たれる。
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