研究概要 |
1.この研究の主目的は、相対論的オイラー方程式、ボルツマン方程式およびその拡張された速度離散モデル、1点で強双曲性が退化している非線形双曲型保存則系、単独保存則系の特異摂動極限を調べることにあるが、最終目的は、より広範囲の流体力学の方程式および非線形双曲型保存則系の解の構造を解明することにある。 2.特殊相対論効果を加味した圧縮性等温流体のダイナミクスを記述する相対論的オイラー方程式について、P.G.LeFloch氏(director of research at CNRS&Jacques-Louis Lions Laboratory,Pierre&Marie-Curie University(Paris VI),France)と共同研究している。この方程式系の真空を含む解の存在を証明した。これは星の誕生の解明への第一歩であり、今後の注目を集める結果となると思われる。また、この結果をもとにして、同枠組みでの非相対論的極限に関する結果を得た。これらの結果を論文3編(内1編は掲載済み、2編は投稿中)に纏めることができた。 3.ボルツマン方程式およびその速度離散モデルについて、S.-Y.Ha氏(ソウル国立大学・准教授)、S,-B.Yun氏(同大学・院生)と共同研究している。方程式および上記モデルの解の安定性について一般的な枠組みでの結果を得て、論文3編(内1編は掲載済み、1編は受諾済み、1編は投稿中)に纏めることができた。 4.1点で強双曲性が退化している非線形双曲型保存則系について浅倉史興氏(大阪電気通信大学・教授)と共同研究している。この方程式は石油貯蔵流などに応用があり、重要な意味を持つが、数値計算なしには解の存在・安定性についての結果が知られていない。そこで、モース理論を拡張することにより、衝撃波解の存在と安定性に関する結果を得て、論文2編(内1編は掲載済み、1編は投稿中)に纏めることができた。 5.単独保存則の解の存在を証明する手法の一つである粘性消滅法を高階の場合に一般化することについて、藤野直樹氏(東京大学・大学院数理物質科学研究科・21世紀COE拠点形成特任研究員および筑波大学・大学院数理物質科学研究科・特別研究員)と共同研究している。得られた結果を論文3編(内2編は掲載済み、1編は投稿中)に纏めることができた。
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