本研究の目的は、楕円曲線に付随したL-関数の特殊値に関するBirchとSwinnerton-Dyerによる予想の幾何学的類似を構成し、そのモデルを通じて本来の予想を理解しよう、という試みである。そのためには、その予想を解決するための、整数論における重要な理論である岩澤理論の幾何学的対応物を構築し、幾何学的岩澤予想を定式化し証明することを目指した。我々は、計画通りに研究を遂行し、双曲3次元多様体に対して岩澤主定理の類似が成立することを示した。具体的には、3次元球面内の結び目の補空間の基本群のユニタリ表現から古典的な方法で捩れAlexander多項式といわれる多項式が定義される。これは、整数論における岩澤多項式の幾何学的類似であるが、本来の岩澤予想は岩澤多項式はゼータ関数(より一般にDirichlet L-関数)の主要項となるであろう、というものであった。この予想は、すでにMazur-Wilesにより解決されている。我々は、結び目の補空間が双曲構造を持つ場合、Dirichlet L-関数をRuelle L-関数に置き換えると、この予想が幾何学でも成立することを示した。また、その証明の過程において得られたL-関数についての情報を統合すると、BirchとSwinnerton-Dyerによる予想が正しいと信じられる十分な理由(数学的には未だ厳密ではない)を見いだすことに成功した。
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