研究概要 |
本研究は「与えられた連続系の超離散化可能な有理写像による離散化手法を打ち立て,コンピュータシミュレーションと解析的な手法を用い,得られた離散的表現の忠実さを計る指針を与える.提案した手法で得られた離散系の超離散極限を行い,その結果で得られるセルオートマトンの性質をもとの離散系と連続系の振る舞いと関連づけること」を目的とし,それに関して本年度は以下の研究成果を得た. 1.[A.S.Carstea et al.,Physica A 364(2006)276-286]で発表した連続模型とその系の離散版にはlimit cycleが一つしか存在しないことにも関わらず、離散系の超離散極限で得られたセルオートマトンに意外にも多数のlimit cycleが存在するという不思議な現象を単純化された系で再現し、その現象の原因を解明した.特に,もとの3次元の模型の代わりに同じ現象を示す2次元力学系の離散化・超離散化を行い,超離散極限が引き起こすlimit cycleの推移を考察した.離散的なlimit cycleが極限において崩壊し,多数のcycleが出るようなパラメーター範囲で,セルオートマトンに現れるcycleの特徴ともとの離散系におけるcycleとの関係を明らかにした. 2.提案した離散化手法の妥当性を調べるため,上記の1.で研究された力学系以外に,limit cycleを持つ模型をいくつか考察し,今後の研究課題において難問となる現象を見出した.それは,高次元の模型の場合,それぞれの従属変数の時間発展の順序を正しく選ばないと得られた離散的表現の忠実さが悪化することである。さらに,時間遅れの項を持つ連続模型の離散化を行うとき,時間遅れの導入のやり方によって,離散系の振る舞いが連続系から大きくずれることもある。この問題の原因は現在研究中である。 3.離散系の連続極限を考察するために,KP方程式の離散版である広田・三輪方程式の多項式解を構成し,適切な従属変数変換を用い,広田・三輪方程式からKP方程式と同じようなlump解をもつ非線形差分方程式を得た.この成果は現在投稿中である.
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