写像空間上の変分問題に関連して、ソボレフクラスの写像の特異点の分類を行った。 高次元においては、今まで大きく分けて2種類の特異点の存在が知られていた。1つは局所的特異点と呼ばれ、現在までの研究でその性質に関してはかなりよく理解されているものである。一方、それとは異なる種類の特異点として、大域的特異点と呼ばれるものがあるが、その存在は知られていたものの、その性質等に関しては体系的な研究は成されていなかった。本年度の研究において、大域的特異点の一般的な性質の解明を行った。特異点を滑らかな写像による近似の障害として捉え直すことで局所的特異点、大域的特異点を別の角度から眺めることが出来ることが分り、その結果、局所特異点は近似の第1障害、大域的特異点は2次以降の障害で、それはソボレフ位相に関する位相不変量であることを示した。また後者はコホモロジーの言葉で記述できることを示した。特に、はじめて大域特異点が出現する場合である単連結4次元多様体上定義された写像の場合を詳しく調べ、この場合に大域的特異点を完全に分類した。 またソボレフバンドルのトポロジーとその解析的性質の研究に着手した。はじめに臨界次元におけるソボレフバンドルは滑らかなバンドルのなすカテゴリーと同値であることを示した。この証明はソボレフバンドルの滑らかなバンドルによるある種の近似定理に基づいて証明されるが、その近似定理の応用として、ウーレンベックの弱位相による滑らかなバンドルの空間の閉包の特徴付け、共形変換で不変なバンドル上の変分問題の解の存在およびある種の最小化列の位相的コンパクト性の証明を行った、これらは臨界次元を超えた高次元のソボレフバンドルの研究、および高次元の変分間題を考える上で基礎となるものである。 これらの結果は学術雑誌および京大数理解析研究所講究録に発表した。
|