本年度は、Stochastic Loewner Evolution (SLE)に関する情報収集と無分散可積分系の簡約について研究した。 ・SLEについては、シカゴ大学のP. Wiegmann氏を訪問しaffine Lie代数の対称性を持つSLEを構成できるかどうかについて突っ込んだ研究連絡を行った。その結果、highest weight表現のlevel 2(highest weightからweightが2下がった所)の所にsingular vector(特異ベクトル)があるか、という表現論的な問題にSLEの構成が帰着できる事が分かった。 実際にそのような特異ベクトルを持つ表現が存在するかどうかという点については分からず、後にモスクワのB. Feigin氏や東京大学の土屋と研究連絡を行ったが、少なくとも「知られていない」という事以上の情報は得られなかった。 また、Triesteの国際理論物理センターにおけるworkshopに参加してSLEの基本的な事項について習得した。 ・無分散可積分系については京大の高崎金久氏との共同研究を継続した。多成分KP hierarchyの無分散化によりuniversal Whitham hierarchyが得られることは分かっているが、今年度はその無分散広田方程式を求め、それによって1変数あるいは多変数簡約を構成した。1成分無分散KP hierarchyからLoewner方程式が現れるが、不思議な事にuniversal Whitham hierarchyの簡約からも同じ形のLoewner方程式が現れる。つまり、Loewner方程式が非常に普遍的に「簡約」というプロセスをコントロールしている事が分かった。
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